SSH台湾研修
2025年12月22日 16時12分令和7年12月15日(月)~12月19日(金) 1年次14名2年次1名・教員3名
昨年度に引きつづき、台南・高雄地域を中心にSSH台湾研修を実施した。
12月15日(月)
初日は、関西国際空港から高雄空港へ到着後、バスで國立高雄師範大学へ移動した。関西空港を離陸してから水平飛行に至るまでの間、自然放射線の計測を行い、雲の中を通過すると放射線量が低下し、雲の上を飛行すると放射線量が上昇するという変化を記録することができた。
高雄師範大学では、同大学が開発している教育教材の紹介を受けた。その教材は、さまざまな実験に対応できるよう、センサーを自由にプログラミングして測定できるものであった。課題研究では実験装置を自作することも多いため、非常に興味深い教材であった。
次に、高雄師範大学構内にある泥火山の噴火口について研修した。地層にたまった泥が水とともに吹き出して水たまりを形成しており、中央付近では水底からメタンガスが吹き出してポコポコと音を立てていた。水温はマグマ噴火とは異なり、低温であるという説明を受けた。
その後、周辺の自然放射線量を放射線測定器で計測し、記録していった。
~生徒の感想より~
・雲の中と上空で放射線量が変化する様子を実測できて興味深かった。
・センサーを自由にプログラミングできる教材が新鮮で、研究への応用を考えた。
・3Dプリンターや自作装置が多く、大学の研究環境に驚いた。
・泥火山噴火口の低温の泥とガスの湧き上がりが予想外で印象的だった。
・土壌の性質や噴火口の深さなど、説明から新たな疑問が生まれた。
12月16日(火)
研修2日目は、昨年度姉妹校となった國立新化高級中學との交流を行いました。午前中は歓迎セレモニーが行われ、午後から科学的交流として、『重力加速度と緯度の関係』について富岡西高校で測定していた重力加速度の値と、台南地域での測定値が異なることを検証するため、振り子の周期を測定して重力加速度を算出する実験や、昨年度測定した場所や、様々な場所での自然放射線の計測を行い、放射線の高い場所や低い場所について環境の違いを元に考察した。放課後は、研修に参加した全生徒がホームステイ先を訪問し、1泊させていただいた。
~生徒の感想より~
・日本(徳島)と台湾(台南)で同じ振り子実験を行い、重力加速度の違いを比較できたことが興味深かった。
・振り子を水平に保って測定することが難しく、実験操作の重要さを再認識した。
・台湾の高校生とは言語が異なるものの、共通の実験作業を通して意思疎通ができたのが面白かった。
・緯度で重力が変わると聞き、経度でも違いが出るのか疑問が生まれた。
・図書館など、自然放射線量が場所によって大きく異なる理由に興味を持った。
・放射線量が室内の方が高い場合があることが意外で、環境との関係をもっと知りたいと感じた。
・振り子実験に積極的に参加できなかったことを悔やむ声もあり、交流授業の機会を大切にしたいと思った。
・ホームステイでは台湾の家庭に触れる貴重な経験となり、交流の幅が広がったと感じた。
12月17日(水)
午前中は、新化高級中学の授業体験を行った。中でもボーイスカウトの授業では、段ボール箱を用いて簡易かまどを作成し、バーベキューを行った。昼食後、ホームステイ先でお世話になったバディと一緒に、「烏山頭ダム」で研修を行いました。事前に何度も足を運び、ダムに関する説明及び、ダム建設を担当した八田與一技師に関する説明をフリップを用いたり、クイズ形式にして楽しく学ぶことができた。台湾の人々は、八田與一氏の功績をありがたいと思っている。最後に、旧放水口での研修を行い、ダム周辺に設置されている発電所や、治水量調節システムについての研修を行った。また、施設においては、我々のために特別に放水をしていただいた。このダムは、専門的には、「八田式セミ・ハイドロリックフィル工法によるダム」であるが、通称「八田ダム」として世に知られている。この工法のダムは、アジアでは、ここだけである。
また、自然放射線計測も同時に行った。水は、放射線を遮蔽する性質があるため、ダム近くでは放射線量が低くなる傾向についても確認した。
次の研修場所については、國立臺湾史前文化博物館南科考古館で、学芸員の方による解説をしていただき研修した。この博物館は、徳島県立鳥居龍蔵記念博物館と共同研究を行っており、現在、鳥居龍蔵博士が台湾調査で記録したフィールドノートの解読したデータを中国語翻訳することを行っているそうである。展示物や、館内、館外の自然放射線量についても計測した。展示物の中には通常の数十倍の値を示すものもあり、その理由について考察した。博物館における展示物の保管方法については、事前学習で、温度と湿度の管理が重要であることを学んでいたため、実際に計測を行い、カビの発生を抑えていることを確認した。このように、今回の研修では、ただ鑑賞するだけではなく、保存科学についても計測を通して学ぶことができた。
~生徒の感想より~
・八田與一によるダム建設の歴史を知り、当時の台湾でどう資金を調達したのか興味がわいた。
・烏山頭ダム周辺で、水により放射線量が低下することが確認できたのが印象的だった。
・亡くなった乳幼児を壺に埋葬するなど、台湾の独自の埋葬文化に驚いた。
・展示されていた土器が時代によって特徴が違い、日本の縄文・弥生土器との違いが興味深かった。
・動物の骨で作られた道具が多く、なぜ木材ではなく骨を使ったのか疑問が生まれた。
・考古学は初めて触れる分野だったが、学芸員の直接の解説が理解を深め、文化や歴史への興味が広がった。
・展示物の中には放射線量が高いものもあり、地質・素材によって値が変わることを体験的に学べた。
・保管庫の温湿度管理を実際に計測し、保存科学の大切さを実感した。
・台湾の昔の生活や文化の名称が多く登場し、異文化理解の楽しさを感じた。
・動物の骨が展示されていた場所によって違いがあることに気づき、生活環境との関係に興味を持った。
12月18日(木)
この日は、午前中に台南大学の卓先生から、台南地域の植物相や生態系、水産業における養殖技術について英語による講義を受けました。質疑応答もすべて英語を用いて行った。国際的なコミュニケーション能力の向上を図った。また、黄銘誌先生からは、ダイオウグソクムシ研究中に新種(エノスイグソクムシ)を発見した経緯や、DNA分析を取り入れた新種判定についても学びました。さらに、ダイオウグソクムシの標本も見せていただき、実物に触れる貴重な機会を与えてくださった。
午後は、臺南左鎮化石園區を訪問し、台湾で発掘された古生物の化石を通して、当時の地球環境や生命の歴史について深く考察した。台湾で発見された動物化石とその特徴について研修した。台湾で最も完璧なサイの化石「早坂サイ」を鑑賞し、哺乳類化石の研究が盛んに行われていることを学んだ。
また、終日、自然放射線計測も同時に行い、フィールドノートに記録した。
~生徒の感想より~
・ダイオウグソクムシやエノスイグソクムシについて詳しく学び、深海生物への興味が強くなった。
・実物のダイオウグソクムシは想像より大きく、最初は気持ち悪さを感じたが、深海で生きるための工夫に気づき、だんだん可愛らしく見えてきた。
・新種発見に関わった教授から直接講義を受けたことが貴重で、深海生物研究の奥深さを実感した。
・深海生物が巨大化する理由に関する複数の理論・仮説が特に印象に残った。
・卓先生の講義で紹介された建物の話が興味深く、台湾の街並みを地域創生の観点から見られるようになった。
・化石園区や台南の文化紹介を通して、台湾の歴史・伝統行事への理解が深まり、特に花火祭りに強い印象を受けた。
・台湾の文化を現地の人から直接学べたことが貴重な経験となり、再訪したいという気持ちが芽生えた。
12月19日(金)
最終日は、午前中「田寮月世界地景公園」で研修を行った。褶曲の背斜部分に貯まった泥が地表に噴出し、浸食作用により生成された地形である。初日に観察した泥火山噴火口との関連性を明確にし、地形形成のプロセスと時間軸を考察した。この特異な地形が、他の地域には見られない荒涼とした美しさを生み出しており、まるで月面を思わせることから「月世界」という名前がついたそうだ。月世界では、自然界の微量の放射線量を測るという実験もした。
昼食後、飛行機の待ち時間を有効活用し、これまでの研修内容を引率教員と振り返り、フィールドノートの整理及びデジタルデータ入力等を行った。最後に、高雄空港から関西国際空港への帰国中に、初日同様、自然放射線量の計測を高雄空港離陸時から水平飛行までの時間記録を行った。初日同様、飛行機が雲の中を通過中は、放射線量が低下することを確認した。このように、5日間放射線量について計測を全員が行い、デジタルデータとして、Formsに入力し、共有した。帰国後の事後研修として解析を行う予定である。
~生徒の感想より~
・月世界の砂がとてもさらさらで柔らかく、世界でも珍しい地形を実際に見られたことに驚いた。
・景観がまるでCGのように感じられ、他では見られない独特の美しさに圧倒された。
・阿波の土柱と似た侵食地形が見られ、そこに暮らす動物の生態系にも興味が湧いた。
・泥火山が大規模に形成されていることを知り、初日に観察した現象とのつながりを実感できた。
・曇天のおかげで月世界の放射線を観測でき、360度広がる非現実的な景色にワクワクした。
・台湾研修がなければ訪れることのなかった場所であり、貴重な体験になったと感じた。